5年生になる前に

(4年生以下へ)

5年生に進級する前に(1年生から4年生のみなさんへ)


電気情報工学科 担任・アドバイザー

高専を卒業して就職するために担任・アドバイザーから5つのお願いがあります。

その1:規則正しい生活をしましょう

高専に入学して、遠い距離を通学する人や親元を離れて寮生活を始める人など、これまでの生活環境と比べると大きな変化があるでしょう。心や体の状態が整っていなければ何もできません。これまで身近な場所から注意をしてくれた親兄弟がいないのをよいことに、自堕落な生活習慣となっていませんか?

高専の授業は日中にあります。朝からベストな状態で授業に臨めるよう、規則正しい食事、睡眠、日常学習の習慣を身につけて自律した学生になりましょう。

その2:計画をたてましょう

高専に入学したら,授業時間の長さや課題の多さ、内容の難しさに驚くことでしょう。それでも心配することはありません。入学した多くの先輩が教わった内容を理解して課題をこなします。長い授業時間にも慣れ、技術者として育ちます。そして、卒業後は社会で活躍しています。

だれもが思います。「時間が足りない」と。無駄遣いしている時間はありませんか? 今行っているその行為は、本当に今しなければならない事ですか? 1日は24時間です。常にこの先を考え、計画を立てて今を行動しましょう。

その3:人の話を聞き,考えましょう

高専生活では、驚くほどいろいろな場所から情報が入ってきます。担任・アドバイザーの先生や各教科担当の先生、教室や廊下にある掲示板、寮生ならば寮の事務室、部活動に所属していれば部活動顧問の先生など、とても覚えきれないかもしれません。

そのすべてを覚える事は容易ではありませんし、必ず忘れます。これらの情報を聞いたら(知ったら)、必要な情報か否かを正しく判断し、必要であれば確実に記憶(記録)に留めるようにしましょう。情報を聞く機会は皆さんに平等にあり、記録するだけなら簡単かもしれません。5年生に進級する頃には、情報を正しく判断し、自らの意思で取捨選択できるようになりましょう。

その4:顔をあわせて話をしましょう

高専に入学して、初めてスマートフォンを手にした皆さんも多いと思います。とても便利な反面、使い方を誤ると人生を狂わせるほどの魅力的な道具です。すでに片時も手放せなくなっている人はいませんか?

考えてみましょう。そもそもスマートフォンはどこにいても会話、すなわちコミュニケーションをしたいがためにつくられた道具です。あなたが会話したい人はどこにいるのでしょう? どんな人と会話をしているのでしょう? 見ず知らずの人、個性も素性もわからない人との会話に、どれほどの意味があるのでしょう?

今、考えるべきことは目の前にありませんか? 会話すべきクラスメート、先輩や後輩、先生は学校にいます。顔をあわせて話をしましょう。コミュニケーションのための道具がコミュニケーションを断ち切るための道具にならないようにしましょう。

その5:勉強以外で+αを

高専の放課後は、これまでで一番「自由」な感じがする時間でしょう。何を指示されることもなく、何かに追われることもなく、無為な時間だけが過ぎてゆく…。それで本当によいのでしょうか。

皆さんは工学の道を志し、松江高専に入学したはずですから、技術者になるための勉強をしっかりとしていることでしょう。では、勉強だけしていれば本当によいのでしょうか。

皆さんの技術者としての「知性」は学校で定めたカリキュラムによって育ちますが、「個性」は学校で定められたカリキュラム以外によって大きく育ちます。5年生に進級する頃には、どのような場面でも堂々と見せられる「個性」を発揮できるようになりましょう。

 

ありがちな高専生の例を2つ、紹介します。

ケース1:A君の場合

A君は中学時代,○○部に所属していました。高専に入学してからも同じ部活動へ入部して活動しています。高専での勉強は、中学時代のように授業を聞いているだけでは理解できませんでした。部活動の時間が終わった後、食事と風呂に入った後からは、出された宿題をまずは片付け、余裕があるときは授業の復習を板書したノートを手掛かりに行い、授業の予習は教科書を先読みすることで勉強するように心がけました。しかし、復習してもよく分からないところが出てきたり、予習しても、そもそも書いてある言葉の意味がさっぱりだったりで、理解できません。

仕方がないのでクラスメートのB君に、授業で意味の分からなところを相談してみました。ところが、B君もわからない様子。困ったA君は放課後に部活動を休んで「進路学習相談室」へ、わからないところの相談に行きました。相談室には専攻科の先輩がいました。先輩は優しく丁寧に教えてくれましたが、それでもわからないところがありました。先輩は「○○先生の所に聞きに行くといいよ」とアドバイスをくれました。A君は○○先生の所に行って,よく分からないところが「少しだけ」わかったような気がしました。

とにかく,部活動と勉強の両立は大変です。A君は少し寝不足で、授業中もつい居眠りしそうになることがありました。さすがにこれではよくないと考え、睡眠時間だけは必ず確保するようにしました。実験の居残りがあったり進路相談室へわからないところを聞きに行ったりするため、部活動の時間もなかなか取れませんでした。しかし、同じように部活動の他学科の同級生も休むことがあったため、活動できる範囲で顧問の先生とも相談しながら部活動は続けました。練習を休むこともあったため部活動の公式大会では、レギュラーになれないこともありましたが、部活動の運営を支えるためにできることを進んでやり続けました。

4年生に進級すると、夏休みにインターンシップ(校外実習,職業体験)が実施されることを知りました。A君は3年生の時に学生会活動に興味を持って、4年生では高専祭の実行委員になっていました。高専祭は夏休み明けにあるため、夏休み期間中は大事な準備期間です。それでもインターンシップのために時間を空け、島根県内にあるC社と大阪にあるD社に申し込み、それぞれ5日間ずつの実習に臨みました。どちらの会社も卒業後に勤めたいと考えていた希望の職種だったため、それは楽しい実習でした。明るく一所懸命に実習する姿を見た会社の人も、社会人として大切なことをA君へアドバイスして下さいました。

4年生では部活動の中心メンバーとして、後輩をまとめる立場になっていました。後輩たちは時々部活動を授業や勉強の都合で休むこともありましたが、自分も同じような思いをしていたので、後輩たちにいろいろなアドバイスができました。4年生の授業では後輩に学習指導をする時間がありました。低学年の時に少しだけわかったような気がしていた問題があり、後輩はさっぱりわかっていないようでした。今見ると、なぜわからないんだろうと不思議に思いましたが、昔は自分もわからなかったので、後輩に体験談を話すことができました。

5年生に進級する春休みにアドバイザーの先生と学科長の先生、A君と両親を含めた4者面談がありました。A君はインターンシップでお世話になった島根県内のC社に就職したいと考えていました。高専にも求人が届いたので、採用試験を受けることにしました。A君の学業成績はクラスでも中ほどと特別良いわけではありませんでしたが、エントリーシートに書く自己PRでは,これまで4年間続けてきた部活動でのことや、その時考えたこと、インターンシップでお世話になった時に考えて志望した理由などを懸命に書き、書類を提出しました。筆記試験と面接があり、面接ではインターンシップの時にお世話になった方が面接員として対応されたため、落ち着いて話ができました。

A君は無事志望したC社から内定をもらい,今では来春から始まる社会人生活に向けて,最後の学生生活を楽しんでいます。


ケース2:B君の場合

B君は中学時代、○○部に所属していました。高専に入学してからも同じ部活動へ入部して活動しようと考えていました。ところが、高専での勉強は、中学時代のように授業を聞いているだけでは理解できませんでした。部活動の時間が終わった後、食事と風呂に入った後からは、部活動で疲れているので宿題をすることもままならない状態でした。余裕があるときは授業の復習を教科書を手掛かりに行おうとしましたが、そもそも書いてある言葉の意味が思い出せません。授業のノートも書いたり書かなかったりで、このままではまずいと思い、友達のノートをコピーさせてもらいました。これで一安心したB君は、授業の予習をしようという気は全くおきませんでした。

友達のノートを見てもよく分からなかったので、ノートを書いたクラスメートのA君に質問したところ、A君もやはり分かっていないようで少し安心しました。A君から「進路学習相談室」に行ってみようと言われましたが、部活動があるため断りました。

とにかく部活動と勉強の両立は大変です。B君は少し寝不足で、授業中もつい居眠りしそうになることがありました。周りを見渡すと、やっぱり皆も眠そうです。さすがにこれではよくないと思いましたが、部活動を終えた後、とても勉強する気にはなりません。仕方がないので、B君は部活動をあきらめ、勉強に専念することにしました。部活動をやめると途端に放課後が暇になりました。最近友達から誘われたカードゲームが面白かったため、放課後は教室で集まってカードゲームをしていましたが、見まわりの先生に叱られては、カードを再々取り上げられていました。最近は部活動で疲れることもないので夜更かしも平気になり、宿題やレポートも夜中にする事が多くなっていました。何とか提出締切にも間に合っていたので、先生から注意されることもありませんでしたが、再レポートが増え、授業中も居眠りすることが多くなっていました。

4年生に何とか進級すると、夏休みにインターンシップ(校外実習、職業体験)が実施されることを知りました。しかし、B君は4年生から自由にできるアルバイトをしようと考えていました。幸いなことに、インターンシップをしなくても単位は十分足りているため、4年生の夏休みはアルバイトをして、念願の新しいスマートフォンを購入しました。新しいスマートフォンではこれまでできなかったことがいろいろできたため、暇さえあれば触って、興味あるブログや掲示板の書き込みを読み、コメントを書いて楽しんでいました。

5年生に進級する春休みにアドバイザーの先生と学科長の先生、B君と両親を含めた4者面談がありました。B君は漠然と就職した方がいいかなぁと考えていましたが、何となく進学してみてもいいかなぁとも考えていました。いつも書き込んでいる掲示板にも、進路についての悩みを書いてみるものの、いろんな意見が書かれていて考えがまとまりません。

結局よくわからなかったので、ずっと悩んでいましたが、学校に届いた求人票の中から何となく聞いたことのある会社を選んでエントリーすることにしました。会社説明会は既に開かれた後でしたが、選考には影響しませんと書かれていたので安心しました。B君の学業成績はクラスでも中ほどと特別良いわけではありませんでした。エントリーシートに書く自己PRでは特に書けることが見当たらず、困ってしまいました。仕方がないので、一生懸命勉強したこととアルバイトでの経験から学んだことを書き、書類を提出しました。筆記試験と面接があり、面接ではアルバイトの採用面接とは異なり、初めて会う年配の方々を相手に慣れない敬語を使いながらしゃべらねばならず、自分でも何を言っているのかわからなくなりました。

B君は結局不採用となり、今も就職活動を続けています。何度か面接を繰り返すうちに、面接には慣れてきました。次の採用試験では上手くしゃべれそうな気がしています。